機関紙 ひと・まち no .28 2009..4発行

政権交代が問われる選挙
                     坪郷 實 
                                   (早稲田大学社会科学総合学術院教授)

 2009年9月までに行われるつぎの衆議院議員選挙は、「政権交代」が問われる選挙である。「郵政民営化選挙」と言われた2005年衆議院議員選挙において、小泉政権の圧勝により、自民党と公明党の与党は、3分の2の多数を獲得した。たが、2007年参議院議員選挙では、自民党が敗北し、参議院では政権与党は少数派になった。このように、衆参において与野党逆転現象が生じている。この機会は、衆参で意見が相違する場合の政策調整メカニズムを整備するとともに、国会を政策に関する討議の場にするための改革のチャンスである。

 さて、この間定着してきた「マニフェスト選挙」は、選挙において政党が「首相候補者とマニフェスト(政権政策)」を提示し、有権者の獲得競争を行い、選挙を通じて政権交代を行うものである。マニフェストは、政権獲得した場合に実施する具体的な政策パッケージの提案であり、政策構想と政策体系とともに、政策実現の期限、その財源を明記し、数値目標を含む工程表が作成される。後者の点は強調されるのであるが、しかし、肝心な政策構想や政策内容に関しては、まだまだ不十分であり、各政党とも、党内での政策論議を活発にすることが必要である。だが、マニフェストは、党内での政策づくりで完結するものではない。

 むしろ、市民シンクタンク、NPO・NGOをはじめとして市民からの具体的な政策提案が多様に行われることが基盤になって、政党の政策づくりも、より具体的なものになるであろう。政党は、市民活動からの政策提案をもっと吸収するべきである。そのためには、市民シンクタンク、NPO・NGO、市民組織は、それぞれの地域における活動を基礎にして、独自の調査研究を行い、より具体的な政策・制度の提案を行う活動を強化することが必要である。

 新たな政策構想として、オバマ米国大統領の「グリーン・ニューディール」が注目されているが、それは、世界同時不況の克服と、地球温暖化問題への対応という二つの大きな挑戦があるからだ。この機会は、温室効果ガスの削減のために、持続可能な発展を目指して産業構造の転換を行い、環境や福祉などの新たな雇用を創出する政策に着手するチャンスであると考える。その場合も、自然エネルギーの促進、住宅やビルの省エネ化、福祉の仕事における労働条件の引き上げ、まちづくり、食の安全、農業など、地域におけるNPOの活動の中から、「新しい仕事」の提案をすることが肝要であると考える。        
    

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