機関紙 ひと・まち no .23

日本都市計画家協会 中越震災復興プランニングエイド
〜人口減少・高齢化の只中でのコミュニティ再生を目指して〜

2年前の新潟県中越大震災により、人口減少、高齢化の進んでいた集落はコミュニティの存続も危ぶまれる状況になりました。日本都市計画家協会中越震災復興プランニングエイドでは、法末集落に週末通い、集落の方々とのお付き合いをする中から、イベント開催、特産品開発、再生計画づくりなど、豪雪地帯の集落の存続をかけた集落再生への取組みを集落とともに進めています。今年11月からは古民家を活用した定住実験や小金井市の子育て支援組織との交流も始まります。
              土肥 英生(NPO法人日本都市計画家協会事務局長)

峠山から見た法末集落の全景

●立ち上げの経緯

2004年10月23日に発生した新潟県中越地震は人口密度の低い中山間地域を背景として発生した地震であり、既に高齢化と人口減少が進んでいた小国町法末集落〈翌2005年に長岡市に合併〉などでは全住民が離村せざるを得ない状況に追い込まれ、地域―産業―生活構造を根こそぎに破壊する被害をもたらしました。
 新潟県中越地震に心を痛めているまちづくりプランナーや建築家が集まって、職能を生かしつつ地域と共に歩む中から中越地域復興の支援を行おうと立ち上げたのが「日本都市計画家協会中越震災復興プランニングエイド」(以下、中越PAと略す)です。

●活動の8本柱
 中越PAでは法末集落支援を中心に活動を進めており、10月からは他集落の再生計画づくりも開始しました。また、法末集落の棚田や畑を借り、無農薬天日乾しの米づくりや野菜づくり、蕎麦づくりも進めています。
1.法末集落(旧小国町)の活動拠点(へんなかセンター)を中心とした集落活動支援
2.UIFAJAPON災害復興見守りチームと連携した古民家調査
3.かぐら南蛮商品開発
4.法末集落再生計画策定支援
5.交流プログラム開発支援
6.法末へんなか通信の発行
7.古民家を活用した定住実験
8.学識者を集めた中山間地再生計画研究会の実施

●活動内容は多岐に渡り、この紙片では紹介しきれないため、今回は、主に@〜Cを中心にその活動概要を紹介します。
1.法末集落の活動拠点を中心とした集落活動支援
 法末集落は、2005年4月1日長岡市と合併した旧小国町の小千谷市よりの丘陵部にあり、冬季は積雪が4mにもなる豪雪地帯にあります。
 わたしたちは敢えて、冬季この集落に毎週末通うことで、集落の方々と知り合い、最低でも3年間程度の期間、集落再生に向けての支援活動を実施することとしました。
1-1.活動拠点の開設

活動拠点(へんなかセンター)

2005年10月22日より、週末には、私たちメンバーが常にへんなかセンター(小国の言葉で『いろり』を意味する『へんなか』という言葉を使いへんなかセンターと略す)に数名程度泊まり、その場所を拠点として、集落の方々と話し合いや集落の活動支援などを行っています。2005年10月22日から2006年10月21日まで延べ約160日間に延べ約800名が参加しています。
1-2.イベント開催支援
■「やまびこリニューアルイベント」
 日時;2005年12月17日(日) 14:00〜18:00場所:法末自然の家やまびこホール
■復興記念『初釜』(賽の神と併せて実施)
 日時:2006年1月15日13:00〜14:30 
 場所:法末自然の家やまびこ 食堂
■安心むら歩き「ハザードマップ」検討会
 日時:2006年2月5日
 場所:あたご荘
■冬季家族交流プログラムの実験
 日時:2006年2月25,26日
 場所:法末自然の家やまびこ

とりぼいら (雪を掘り込んだかまくら)

■法末を歌おう会
日時:2006年4月22日
 場所:法末自然の家やまびこ
■あぜみち茶会
 日時:2006年6月3日
場所:法末自然の家やまびこ前
■震災復興祈念 盆踊り
 日時:2006年8月15日
 場所:法末自然の家やまびこ裏グランド
■実りの茶会
 日時:2006年10月14日
 場所:法末自然の家やまびこ前

盆踊りでのハワイアンダンスの様子

2.民家再発見調査の実施
女性建築家グループ(UIFAJAPON)が、集落内の古民家の価値を見つけ、これをグリーンツーリズムにも活用したり、全国にPRしたり、法末の方の誇りとなるよう、資料としてまとめる活動を実施していす
3.かぐら南蛮商品開発
中越地域を中心とした特産の野菜であるかぐら南蛮を活用した商品開発を集落の方々と共に進めています。
4.法末集落再生計画策定支援
法末集落の役員と中越復興市民会議、中越PAにより法末たっしゃらが結成され、法末集落再生計画の検討が進められています。
中越PAは、この検討調査を長岡市から受託し、集落再生計画づくりを全面的に支援しています。


法末振興組合長 大橋昭司氏のコメント(略)まわりの人も良くなって、自分も良くなる。そういう考えでやって生きていきたい。(略)こうしたら都会に売れるといった知恵をプランニングエイドには期待したい。法末振興組合長 大橋昭司氏のコメント


豪雪に埋もれた古民家

震災前52世帯あった集落は、43世帯まで減少しましたが、様々なイベントを通じて、住み続けられる法末を目指そうという、機運が盛り上がりつつあります。しかし、集落には20代以下がおらず、65歳以上の人口比率が66%となるなど、集落存続が厳しい状況です。そこで、新たに、民家を借りて都市住民と集落の交流を進め、将来的に集落に定住する人を増やすことを目的に定住実験プログラムを11月から実施する予定です。

今後の活動に向けて
今後2年間は各種基金等からの助成を受けて活動を進める予定です。関心を持たれた方は是非、ご参加ください。
連絡先:NPO法人日本都市計画家協会〒105-0002 東京都港区愛宕 1-1-9 愛宕チャンピオンビル4F
TEL 03-5401-3359/FAX 03-5401-3389 
e-mail  jsurp@japan.email.ne.jp  土肥 英生


 NPO法人日本都市計画家協会は、まちづくり支援・交流・研究を行う全国的組織です。研究会活動など活発に行っています。関心をお持ちの方はご一報下さい。

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