機関紙 ひと・まち no .22

就労継続支援事業A型(雇用型)の問題性〜障害者自立支援法の中から
 
               寄稿 NPO共同連事務局長 斎藤縣三


 
今年4月の障害者自立支援法の施行はその名とは裏腹に自立を支援するどころか、国家による詐欺行為です。理念としては地域自立の実現を約束しながら、実際にはそれを困難にする政策を強制し、金だけ払わせようとしているのですから。マスコミなどは利用料1割負担を大きく取り上げていますが、問題は山積みです。認定区分による新たな選別、支援費の大幅削減、個別支援計画という管理強化、地域生活支援事業という自治体負担増…。
 その中の一つに「就労支援の強化」をめぐる問題があります。ここでもこれまでなおざりにされていた障がい者の就労を充実させるという理念はいいのですが、実際の政策は就労を遠ざけているのです。


就労継続支援A型(雇用型)構想への疑念
 就労継続支援A型(雇用型)という事業が新設されます。これは企業就労が困難な人々に、一般と変わらぬ労働条件で就労の場を提供しようという事業です。当初の構想ではこの事業全てが雇用型であったのに、途中からB型(非雇用型)がつくられ、A型は全体の3割程度でよいとされてしまいました。
 私の参加する「共同連」は障がいある人、ない人が共に働く事業所づくりをめざして活動しているのですが、当初はこの就労支援事業構想に多いに期待を抱いたものでした。共に働くことを具体化し、更に働き難さを抱えている人々の参加を認める制度がつくられるのかと思ったからです。
 しかし、結果は現在ある「福祉工場」という制度より助成金は減らされ、一緒に働く非障がい者の数は少なく制限され、労働法適用と言いつつ最低賃金除外は当然視され、所得税上より過酷な利用料を払わなければ働けないのです。これではA型事業は発展するわけがありません。それどころかB型事業は月々たった3,000円の工賃さえ払えば良いとされ、これまで以上に福祉的就労といわれる非労働的状況に甘んじなければなりません。

障がい者就労への仕組みづくり
 それに対し、滋賀県で「社会的事業所」、札幌市では「障がい者協働事業」という新たな制度がつくられています。ここでは障がいのある人、ない人が共に働くというあり方に立脚し、障がい者の労働権保障を実現しようとしています。
 いま一度、政府(厚生労働省)は福祉制度の中に障がい者の就労を閉じ込めるのではなく、新たな視点でもって、イタリアの社会的協同組合にみられるような仕組みづくりを考えなければなりません。そうでなければ障がい者の就労は発展しません。


▲home 機関紙ひとまち

copyright (c)2003-2006 Hitomachi-sha All-Rights Reserved.
無断転載・コピーを禁じます