〜機関紙「ひと・まち」21号〜2006年4月寄稿
                            
              5年間の介護保険調査分析プロジェクトに参加して      
                                                    石川 紀(東京・市民調査会)                     
 春4月、年度の変わり目は制度が変わる時期でもある。その制度が自分の生活にどのような影響を及ぼすのか、6年前の介護保険スタート時にも、多くの人が不安を抱えながら関心を寄せていた。生活クラブ運動グループ福祉協議会と市民シンクタンクひと・まち社が行った「介護保険制度検証のための基礎調査」は、その利用者の視点で行われた市民の調査である。単年度ごとに分析と報告が行われたが、5年間の調査終了に合わせ、改めて“全体を通した分析”を行い、そこから“市民版地域福祉計画”を策定するためのプロジェクト(以下PT)が04年に発足した。

 PTではまず全データの中から5年間継続して回答のあった103人に事例を絞った。そして、本人の介護度の変化とサービス利用パターンの関係、介護する側の状況、経済力、認知症などの視点で分析を行い、タイプごとに事例検討を行った。アドバイザーの小林良二氏(首都大学東京・教授)に経時分析の初歩から指導を受け、試行錯誤の分析だったが、作業が進むにつれ、データ、生活時間調査、家族状況、自由記述から、様々なドラマが見えてきた。実際にサービスを利用し制度への不信感が和らいでいった本人、90代の親を介護する70代の夫婦、自立を期待して母親の介護に厳しく接してしまう娘、妻の介護を抱え込みストレスが増していく夫、あえて仕事や地域活動を続けて介護から離れる時間をつくっている家族…、事例を通して傾向が見えてくる一方、ひとつとして同じケースはなく、まさに本人と家族の103の生活がそこにあることを、5年間という年月とともに実感した。実は私自身はこの調査には関わっていない。その意味で、事業者、家族、調査員などの立場でPTに参加した他のメンバーの発言も大変勉強になった。介護保険については、ともすると制度の大枠でしかとらえずに、制度改善などを自治体に提案してきた自分の姿勢を反省しつつ、遅ればせながらそれに気づかせてくれたPTに感謝している。

 まもなくPTの約2年間にわたる活動が終わる。04年度の活動は「介護保険制度検証のための基礎調査・最終報告書」に、事例研究の分析結果と、「市民版・地域福祉計画づくり」が報告されている。また、05年度の事例研究についても報告書の作成が進んでおり、内容についてはぜひそちらをお読みいただきたい。 
   

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