第3回調査
(2000年10〜11月)

 「介護サービスの利用・介護者等に関する実態調査」 概要



調査の目的

1.介護保険制度はご本人の身体状況が介護を要するようになったとき、保険サービスを受けることができます。そこで身体状況の変化に制度がきちんと対応できているかどうかを、利用者の立場から検証します。
2.介護を担う人のほとんどが女性といわれています。介護保険は誰にとっても安心して年をとることができるように、介護サービスを社会のしくみとして提供するものです。介護の社会化が進んだかを調査します。
3.介護保険制度は2003年に見なおしをすることが、はじめから予定されています。利用者にとって使いよい制度にするために調査の結果を生かして提案をします。

調査方法
1.対象者は、都内に住むこれまでに何らかの福祉サービスを利用したことがある40歳以上の男女500人。
2.期間は介護保険が始まる前の年の1999年から2003年までの5年間。
3.1年間に2回、同じ人に調査票を渡して、訪問の上聞き取り、回収する方法で、5年間で10回の追跡調査を実施します。

この報告概要版2は、【介護保険制度検証のための基礎調査】の第3回調査「介護サービスの利用・介護者等に関する実態調査」(2000年10〜11月)の報告の概要版です。

調査対象者の全体像
●第3回調査に協力してくださった方は全部で505人でした。(居宅385人、自立57人、合わせて在宅442人。+施設63人)
第1回調査から第3回調査までに253人減りました。理由は、亡くなられた方79人、入院や入所、転居など様々です。調査拒否も37人ありました。
●施設は63人となり、在宅から施設に移られた方は都合20人になりました。

●対象者は男性1に対して女性は3.2倍でした前回調査より0.4倍女性が高くなりました。
●世帯の状況で最も多いのは「64歳以下との同居」204人でした。次に多いのは「単身」70人、次が「配偶者と二人」で59人。「その他の高齢世帯」が45人でした。

居宅サービスの利用状況
サービスの利用人数は増加
●「1.介護保険サービス」を利用した人は285人、「2.自治体独自のサービス」は50人、「3.介護保険外の自費」でのサービス利用は64人でした。
●ほとんど(201人)が1だけを利用したが1・2・3全てを利用した人が11人だった。1と2の組み合わせは31人、1と3の組み合わせで利用した人は42人でした。
●利用限度額に対する利用状況は、62%の人が限度額以下の利用に止まりました。限度額一杯まで利用した人は19%で前回調査より6%増えました。また、限度額を上回って利用した人は4%で前回調査より1%減りました。
                     
介護保険サービスの利用金額2,000円増
●サービスの利用金額の平均は、最も高いのが要介護5の20,637円、最も低いのが要支援の3,012円で要介護度の高さに沿って金額も上がる結果になりました。
●利用限度額との対比では、要介護3が最も高く、限度額の61%(15,948円)でしたが、平均では56%(12,567円)と低い利用に止まっています。
● 前回調査と比べると、介護保険サービス利用人数は26%増えましたが、利用金額では平均で2,000円弱しか伸びませんでした。
しかし、全体の利用人数が約70%に、要介護5では86%に伸びたことは、介護保険制度が利用者に浸透してきたことの現れといえます。

介護保険外で自費で利用したサービス
●自費で利用したサービスで最も高額だったのは、13人が利用したショートステイで、1人あたりの平均金額は57,154円でした。次にホームヘルプで41人が利用し、1人平均50,747円、デイサービスも13人が利用し、1人平均17,625円でした。
ショートステイやデイサービスは要介護度毎の利用限度額との兼ね合いや、施設整備の遅れもあって、利用日数に制限があるので、緊急の場合には自費での利用を余儀なくされていると考えられます。
自治体が独自に提供するサービスの利用
●紙おむつの支給は86人の利用があり最も多かった。現物で支給する自治体と、チケットを支給する自治体がありました。支給される量を超えて利用した平均月額は1,105円でした。
●食事サービスは33人が利用し、自己負担の平均月額は6,090円でした。移送サービスは19人の利用で平均月額3,460円、その他機能訓練、寝具乾燥・丸洗いなどのサービスを利用した人もありました。

サービスの満足度
サービス全体についての感想
●介護保険のサービスを利用して「満足」と感じたのは28%の人でした。これに対して約半数の50%の人は「普通」という感想を持っています。「不満」と感じた人は8%でした。

●介護保険料については「安い」と感じた人はわずか4%で、これに対して「適当」と感じた人は約半数の51%でした。高いと感じた人は24%いました。ちなみに、保険料の金額を知っている人が59%、知らない人が31%いました。
●サービス利用の1割負担については「軽い」と感じた人が9%いました。これに対して「普通」と感じた人は47%。「重い」と感じた人は26%でした。

●サービスを利用して家族介護の負担はどうなったかを見ると、「軽減された」と感じた人は27%で、「増えた」と感じた人は9%いました。44%の人は「変化なし」と感じています。
●必要なサービスが「あった」と感じた人は45%で最も多く、「あまりない」24%を大きく上回りました。必要なサービスが「ない」と感じた人は8%いました。

ケアプランとケアマネジャー
ケアプランの変更
●ケアプランは要介護者や介護者の状況に変化があったときにいつでも変更することができます。ケアプランを変更した人と、しなかった人はほぼ半々で44%と46%でした。
●ケアプランの変更をした人の44%が6ヶ月間で1回の変更でした。その他は2回から10回まで様々でした。ケアプランの変更は、通常ケアマネジャーに相談しますが、サービス提供事業者やかかりつけ医や自治体の窓口に相談した人もありました。ケアマネジャーと1回も連絡が取れない人もありました。
● ケアマネジャーを替えた人は22人ありました。ケアプランが気に入らなかったという理由が3人でしたが、ケアマネジャーの廃業を理由に挙げた人が8人いました。廃業の理由は身体を壊して事業所を退職したり、仕事の煩雑さに理想との乖離を感じて辞めたケアマネジャーもありました。
サービス担当者会議は開催が少ない
●ケアマネジャーが要介護者や介護者を交えてサービスの調整をはかる場としてサービス担当者会議を開催することができます。しかし今回の調査でも48%の人は「開かれなかった」と回答しています。「わからない」23%とあわせると71%が経験していないことになります。前回の調査からほとんど変わらない状況が続いています。

介護をする人の生活について
介護者の65%は女性
●介護者で最も多いのは「息子の妻(嫁)」で30%を占めています。次が「娘」で27%です。これに「妻」の8%を加えると女性の介護者が全体の65%になります。

●介護者になった期間は、5年以上が最も多く43%になっています。特定疾病で見ると脳血管疾患が最も多く、初老期における痴呆や骨粗鬆症などが続いていますが、長期療養が必要な疾病を持つ要介護者が多いと考えられます。
●1人の介護者が介護をしている人数は1人
が最も多く70%でした。2人を介護している人は13%、3人以上が2%になりました。

介護保険サービスを利用後生活に変化
●介護保険を利用するに当っての考え方では「家族介護の負担軽減」したいと50%の介護者が答えています。一方、介護者の負担軽減と矛盾しないで「本人の要望を最優先する」35%や、「本人の自立のため」33%を実現しようとすると、サービスの利用が条件になります。
●しかし介護をする上で困っていることの、最も多い回答は、介護者の「心身の負担が大きい」34%ことを上げています。さらに「もっと介護サービスを利用させたい」21%が次に多い回答となっています。

●以上のことから、介護サービスをもっと利用したいが、要介護者本人の気持ちや家計との関係で、介護はまだまだ家族にゆだねられている実態が見えます。介護保険導入後の介護者の変化を尋ねても、生活は「変わらない」と答えた人が43%に及んでいることからも、容易に想像できます。
●しかし、「ケアマネジャーに相談できるようになって気が楽になった」22%、「計画的な介護ができるようになった」17%、「介護について家族で話し合うようになった」6%など、介護を客観的に捉える視点が生まれ、社会化の一歩が始まっていることがうかがえる結果になりました。

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