護にかかる費用調査
(2000年12月〜2001年2月)報告(概要)

 調査の目的                                             介護保険は、介護を必要とする高齢者の生活を社会が支えるしくみとしてとして生まれた。しかし、介護保険サービスは12項目に限られていることから、介護生活の一部分を支える制度でしかありません。この「介護にかかる費用調査」は介護保険サービスの金額だけでなく、諸手当、医療費、介護用品費、光熱水費などの項目について記録することで、介護に係る費用全体を算出し、公的に賄われる費用と自費で賄う費用の実態を明らかにし、要介護者及びその家族への支援のあり方を検討する資料を得ることを目的とした。

 調査対象                       
 65歳以上(第1号被保険者)を中心に、介護保険の対象者である40歳以上(第2号被保険者)で介護を必要とする人にも対象を広げました。居住地は、東京を中心に11都道府県に点在している。
 対象者の選出は「介護保険制度検証のための基礎調査」の協力者65人、公募の協力者27人、NPOケアセンターやわらぎの協力者8人の合計100人としました。
100人の対象者に調査票を郵送し、有効回答者は65人で集計率は65%だった。

 調査方法                         
 対象者に調査票を郵送し、3ヶ月間の記録後、調査票を郵送で回収。調査票は記録をし易くするために家計簿形式を採用した。

 調査対象者の全体像                    
 回答者の男女比は1対2.6と女性が上回った。年令の分布では85歳〜89歳が最も多く、次が90歳以上だった。要介護度の分布は介護度5が最も多く、要介護度4が続いている。最も少数は要支援となっている。

年収 
 年収の分布は101〜200万が最多数で32.3%、次いで201〜300万が多数で21.5%を占めた。年収の男女別を比べると女性は男性の約半分になっている。年収の内訳は、年金が最も多く61人、その他の収入として最も多いのは老人福祉手当等18人、次が障害者手当等14人、不動産収入3人、計41人がその他の収入を持っていた。生活保護は0だった。現物やチケットで支給される収入ではおむつが最も多く17人、タクシー・ガソリン券11人、その他理髪券など2人だった。

介護者  
 主に介護者をしている人で最も多いのは嫁で33.8%、次いで娘21.5%、妻16.9%で、女性が全体の72.3%を占めている。 このうち職業を持った女性の介護者は12.8%だった。
家族構成では、65歳以下との同居世帯が最も多く56.9%を占めている。次いで配偶者と二人世帯が23.1%、単身世帯が13.8%だった本人と65歳以上の同居世帯は1.5%だった。高齢者世帯は、全体の38.4%となっている。家族の人数は1〜7人まで様々で、3人家族、2人家族の順で多かった。

 介護にかかる全体の費用について                     
年収と総支出 
・年収と1人当り月平均総支出(住宅改修費と高熱水費を除く)の関係を見ると、年収の多少に関わらず、また男女に関わらず平均月総支出は5万円以下に多く分布している。総支出の最低値は2,264円、最高値は209,324円。

・家族構成別の1人当り月平均総支出は単身が最も高く63,200円、配偶者と2人世帯は43,177円、本人と65歳以下の世帯は40,926円とほぼ横並びだった。単身者の支出の幅は上下に広がっている。
・介護者別1人当り月平均総支出は、娘53,036円、妻44,985円、嫁35,704円の順に高かった。最も金額に幅があったのは娘が介護をする要介護者だった。

目的別の費用について                   
(1)医療費  
 医療費全体の月平均自己負担金額は5,148円になった。老人保険法に基づき70歳以上の高齢者(寝たきりは65歳以上)は医療費の優遇制度があり、この程度の金額になったといえる。ちなみに東京都が平成9年に行なった65歳以上の高齢者の月平均医療費(病院診療・薬剤自己負担分は9,800円なっている。この差は本調査の対象者の年齢が85歳以上47.6%を占めることと、障害者手当の受給者が21.5%含まれることに起因するものと思われる。
(2)福祉サービス利用料 
・在宅サービス利用料 
 この調査では在宅サービスには、ホームヘルプ、訪問看護、訪問入浴、などが含まれる。それらの1人当り月平均利用金額は7,464円だった。最も高い利用金額は、要介護3が突出しており31,976円になった。最も低い利用金額は要介護1で2,801円だった。
・通所施設サービス 
 デイサービス、デイケアなどが含まれる。それらの1人当り月平均利用額は23,983円で、最も高い利用は要介護5の42,695円だった。
・施設入所費 
 特養、老健、療養型病床群等の入所施設の利用費は、1人当り月平均金額で63,489円だった。サンプル数が10例しかなく、該当の対象者の個別利用金額の域を出ないが、利用者の平均金額ではどの項目より高くなっている。
(3)その他の費用 
・介護用品、器具など  
 おむつが最も多く28人が利用しているが、公的な現物支給の受給者と重なる人は17人だった(自費での一人当り月平均金額は、1898円)。脱脂綿、ガーゼなど介護に必要な日用品・衛生用品、リハビリ靴等があった。車椅子・ベッド等の新規購入はなかったが、必要な人はすでに調達済みと考えられる。1人当り月平均支出は9,674円(おむつ代含む)だった。
・特別食などの費用 
 ここでは11例の記入があり、要介護1の突出した金額は低蛋白の米などの食品や栄養剤を使っている例である。その他に腎臓食の記入があった。1人当り月平均金額は7,388円だった。
・交通費 
 通院のほか、外出などの交通費を、要介護者と付き添いに当る介護者の分を記入してもらった。要介護者の1人当り月平均交通費で最も高かったのは要介護2の8,900円で通院のための費用だった。介護者の1人当り月平均交通費で最も高かったのは要介護4の11、236円で通院の付き添いだった。要介護者全体の平均交通費は5,738円で、介護者全体の平均交通費は5,107円とほぼ同金額になった。
・雑費 
 雑品の主なものは入院中のテレビカードやテレホンカード、洗濯機・乾燥機使用料などが毎月計上されている例があった。在宅ではヘルパーのお茶菓子などだったが、映画チケットや介護者の腰痛予防のためのスイミングなどが見られた。全体の1人当り月平均金額は4,453円になった。

(4)光熱水費 
・光熱費 
 調査期間が冬であったことから暖房のための光熱費が高額になっている。最も高い月平均光熱費は一月の電気代で14,665円で、ガスはやはり一月の11,160円だった。3ヶ月の月平均金額は電気13,482円、ガス10,069円だった。光熱水費の合計月平均金額は30,093円にのぼっている。
 灯油を補助的光熱費として3人が計上し1人当たり月平均金額は10,516円だった。また、灯油を雑費に計上した例は、月金額は平均約7、600円だった。
・上下水道費 
 介護者を抱える家庭では洗濯物が多く上下水道の利用金額に反映される。最も高い月平均金額はやはり一月で13,063円だった。

(5)住宅改修費 
 住宅改修は大きな金額であることと、1度改修すると当分発生しないことから、調査期間から1年以内の範囲でさかのぼって回答してもらった。改修の内容はふろ場、トイレ、台所、玄関などの8例のバリアフリー化が挙げられている。規模、金額は多様だがそれぞれ保険適用で経費をまかない、自費による負担を軽減させている。
 参考に過去の例を回答された例が2件あったが公私の負担などは不明である。

 まとめ                          
(1)福祉サービスの利用状況と家計 
・要介護者の生活の場「主に在宅」と「主に施設」の状況 
 介護費用を検討するに当たって、在宅と通所の合計金額が入所施設利用金額を上回った対象者を「主に在宅で介護を受けている57人(以下A群)」とし、施設利用金額が上回った対象者を「主に施設で介護を受けている8人(以下B群)」に分けて要介護度毎の特徴を検討した。
 A群では当然の事ながら施設利用はほとんどなく、要介護2で6,500円、要介護4で8,545円の利用が見られる。これは老健などの施設と自宅を行き来しながら、基本を在宅介護においていることが伺える。要介護度が上がるにしたがって通所の費用も上がっている。通所の平均利用金額は24,271円である。
 体が元気なうちはホームヘルプを使いながら通所は楽しみで利用するケースがある。要介護度が上がってくると施設での入浴やリハビリなど家族では困難な介護を施設で受けたり、家族が留守にできない場合も増えるのでショートステイの利用が多くなった結果と考えられる。
 もう一つの特徴は要介護者、介護者ともに交通費が多いことである。要介護度が低いグループでは本人の費用が多いが、本人と付添いの介護者と2人分の交通費を合わせると、平均で10,217円になった。 
 B群の特徴は施設サービス利用金額以外の費用が極端に低いことである。要支援、要介護1、2、ともこのサンプルでは施設利用は0だった。要介護3では在宅のサービス利用と通所施設利用が0である。要介護4、5では在宅サービスの利用は平均13,554円、1,732円と低く、通所の施設サービス利用は平均9,193円、27,514円とやはり低くなっている。これは在宅から施設への移行が行なわれたからである。
 もう一つは福祉サービス以外のその他の費用が要介護4の介護用品費、介護者交通費など以外ではほとんど見られない。施設にもよるが特養や老人病院への入所の場合は家族もあまり頻繁に訪問しないことが考えられる。

・生活の場の違い(A群)と(B群)の介護費用の考え方の違い 
 A群では介護を完全に社会にゆだねるのではなく、単身者以外は一部を家族の介護者が担うことが前提になっている場合が多い。しかし、家族介護の費用は金額としては表に現れない。従って介護に係る費用のうち、福祉サービスの合計金額が必ずしも必要なサービスを全て購入利用しているわけではなく、結果的に家計のなかのバランスで介護費用の大枠が決定されているのが現状である。後掲の「自由記述・感想」には、介護費用の負担を抑えている内容が多い。その結果として、A群の医療費も含む福祉サービス合計の1人当り月平均金額は22,511円となった。
 一方B群では、介護のほとんどを家族の代わりに社会にゆだねている結果、全体の家族介護がない。代わりに1人当り月平均福祉サービス合計金額は78,361円とA群に比べて5万円以上高くなっている。B群での介護にかかる費用の考え方は、本人または世帯の収入の許容範囲が本人の将来に向けての備えの分も取りこんで、家計とのバランスを超えることも可能であると考えられる。

(2)援助が必要な事柄 
本調査ではサンプルが少ないことから、前章では統計的な意味より、いくつかの事例を検討する中から、介護に係る費用についての考え方をまとめた。ここでは本調査からわかったことを箇条書きにする。
収入の多寡に関わらず、要介護に応じた介護サービスが必要である。
・必ずしも要介護度が高いほど高額(多量)のサービスを必要としているわけではない。
・現状ではその分岐点は、介護者が同居しているか否かが一点である。もう一つの分岐点は要介護者の痴呆の有無にある。
・「自由記述・感想」では、介護に関する不安が費用だけに止まらないことや、保険料を払っていても、自分の人生の選択を自由にしたいという意見もある。介護者の心身のケアを求める声もあった。
・地方の対象者の収入の個人欄に、長男からの仕送りが毎月定額記入された例があった。東京では見られないことだった。
・介護者の有無を基準にするのではなく、介護が必要な人が必要な介護を手に入れるための援助が必要。検討課題として若干の例を挙げたい。
・介護サービスの自費による利用分の税控除
・光熱水費への援助
・介護者のいない人への援助(相談、介護以外の生活支援、など)
・老人福祉手当は2003年までに廃止されるので、無年金者や老齢基礎年金のみの低所得者への支援策
・介護費用が嵩まず介護を増やすための、ボランティアや自治体独自のサービスの豊富化と情報の提供
・良質のケアマネージメントや介護者の心のケアを提供する


介護費用調査の報告書(表、グラフ付)のお申し込みは、メール・FAXで、送り先を明記の上、ひと・まち社までお願いいたします。 1,000円(+送料実費負担)でお送り致します。

ひとまち社   電話・FAX 03-3204-4342

home

copyright (c)2003 Hitomachi-sha All-Rights Reserved.
調査報告を引用、転用する場合は、事前にお知らせくださいますようお願いします